企業の収益力、成長力を見極める

2026.01.09

 新年あけましておめでとうございます。今年の干支は十干と十二支の組み合わせで「丙午(ひのえうま)」です。「丙」は草木の葉が勢いよく成長するさまを示し、「午」は陽気が高まった状態を表します。「丙午」は物事の勢いがピークに達する年ということもできるようです。かつて、この年に生まれた女性は気性が激しいとの迷信があり、出産を控える動きから前回の「丙午」の1966年は出生数が前年比25%、136万人と大きく落ち込みました。ただし、昨2025年の出生数は66万人強と推計されているので、出生数としては隔世の感があります。

 昨年の株式市場を振り返ると、日経平均株価(以下日経平均)が初めて5万円台に乗せましたが、株価が大きく変動する日も多く、日経平均が前日比で1,000円以上動いた日は20回に達し、投資判断の難しい年であったと言えます。ただ、日経平均が5万円に達したことで1,000円の変動率は2%です。
 そこで、2000年以降、前日比終値で日経平均が2%以上動いた日数を数えてみました。最多は世界金融危機(リーマンショック)の2008年で86回、次がITバブル崩壊後の2001年の60回でしたが、2025年は24回です。市場全体の動向を示すTOPIXで2%以上変動した回数は、2008年は88回と日経平均を上回りましたが、2001年は41回、今年は15回です。これら以外の多くの変動局面でTOPIXは日経平均の変動率を下回っています。
 両者の差は計算方式によります。日経平均は225社の各社株価に「株価換算係数」を乗じて、これを足し上げて株式分割、併合などで修正した「除数」で割って求められます。株価の高い銘柄の値動きが反映されやすい傾向があるのに加え、「株価換算係数」の影響もあります。日経平均で最も構成比の高いアドバンテスト(6857)の「株価換算係数」は8、ソフトバンクグループ(9984)は6ですので、同じ1%の株価変動でも影響度が大きくなります。この両社に、ファーストリテイリング(9983)、東京エレクトロン(8035)を加えた4社で日経平均の3分の1を占めており、日経平均を大きく動かしています。
 一方、TOPIXは浮動株数に基づく時価総額の合計から計算されます。採用社数も1,660社余りと多く、最も大きいトヨタ自動車(7203)でも構成比率は3%強にすぎません。機関投資家のベンチマークとしてはTOPIXが多く用いられています。株式市場の動向を判断するにはTOPIXが有効です。日経平均では変動率をみて、変動幅で一喜一憂しないことが肝要です。

 さて、冒頭の干支にまつわる相場格言では、「辰巳天井、午尻下がり」と言われています。しかし、株価を考える際に最も重要な企業業績は堅調です。主要企業で構成されるTOPIX500(除く金融)の今2025年度の会社計画の企業業績を集計すると前年度比3強%経常減益ですが、会社計画の為替前提は1ドル145円、1ユーロ170円とされているので、足元の為替動向からみて上振れ余地が残されています。アナリスト予想を集計したQuickコンセンサスでは同3%弱の経常増益予想です。業種動向をみると、自動車を中心とする輸送用機器が大幅な減益予想となって全体の業績を押し下げていますが、この輸送用機器を除くと、会社計画でも同3強%の経常増益、Quickコンセンサスは同8強%増益予想となります。今後の株価を考える上では来2026年度の業績がポイントになりますが、Quickコンセンサスでは今年度比11%の経常増益予想です。トランプ関税の影響も当初懸念されていたほどは大きくなく、輸送機器の業績回復も期待され、来年度に向けて企業業績は堅調と考えられます。

 どのような銘柄が今年上昇するのかをあてることは難しいですが、昨年の株価上昇上位企業がいくつかの気づきを与えてくれます。下表に全上場企業から昨年1年間の株価上昇率上位20社を示しました。出来高、時価総額の小さい銘柄は手口によって大きく上昇することがあるため、2024年12月末で時価総額が100億円以上、売買代金で1億円以上の銘柄のランキングです。多くのデータをみましたが、紙幅の関係で関係のありそうなもののみの掲載としました。
 話題の生成AI関連とみなされる銘柄が半分近く、高市首相の掲げる17戦略分野に関連する造船などのほかに、業績好調な建設、医薬品、小売りなども挙がっています。これらの企業の共通点として、いずれも今期の予想数字ではありますが、(1)本業の収益力を示す売上高営業利益率が高いこと、(2)一部減益企業もありますが経常増益率にみられる利益成長率が高いこと、(3)株主の投資リターンを示すROE(自己資本利益率)が高いことがあります。
 今年、企業業績は順調な拡大が予想されますが、アメリカ市場では株価のけん引役の交代がありそうです。株式市場全体の変動に惑わされることなく、企業の財務データ、成長力を見極めることがより重要な年かと考えます。            
(12月22日記 山中 信久)

(図表)2025年の株価上昇率上位20社

(注1)母集団は2024年12月末の全上場企業から同月末の時価総額100億円以上かつ売買代金(25日移動平均)1億円以上の企業。業種の後ろの*はスタンダード上場、他はプライム上場
(注2)売上高営業利益率、経常増益率、ROEは日経予想。株価の2024年は12月30日、2025年は12月15日現在。予想数字は全て12月15日現在
(出所)Astra Managerのデータを基にいちよし経済研究所作成

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