中小型株投資再考
2026.04.10

東京では平年より5日早く3月19日に靖国神社の標本木で61輪の開花が確認され、開花宣言が発表されました。前日は2輪の開花だったので、一気に花開いたようです。各地からは、満開の知らせとともにお花見を楽しむ人々の映像が送られてきています。
一方、世界に目を転じると、2月28日のアメリカとイスラエルによるイラン攻撃で緊張が一気に高まりました。特に問題となるのは、イランによる事実上のホルムズ海峡封鎖、さらにはイランからの湾岸諸国の原油関連施設への攻撃で、原油価格が高騰していることです。2月下旬までは1バレル60ドル台で推移していたアメリカ原油価格先物(WTI)は足元100ドルを超える水準まで上昇しています。
そこで、原油価格の上昇が日本経済、そして企業収益にどれくらいのマイナス要因となるかを調べてみました。少し古いですが、2022年12月に内閣府が「短期経済マクロモデル(2022年版)の構造と乗数分析」に原油価格の上昇が国内総生産(GDP)に与える影響を試算している資料が参考になりました。
それによると、原油価格が年間平均20%上昇すると1年目の名目GDPを0.38%pts.押し下げる結果となっています。2020年度以降のTOPIX500(除く金融)の経常増益率との相関で見ると、名目GDP0.38%pts.のマイナスは経常利益集計の2.45%pts.の下方修正要因となります。
また、野村證券では原油価格が年度平均で10%上昇した場合、主要企業の一株当たり利益(EPS)を1~1.25%押し下げるとしています。原油上昇の影響をリニアに計算するのは問題がありますが、年平均50%上昇したとすると6~7%程度の経常利益押し下げ要因となります。
足元の主要企業(TOPIX500(除く金融))の業績を集計すると、2025年度は会社計画で微増益、アナリストによるQuickコンセンサスでは同4%の経常増益予想となっています。いずれも第2四半期発表後の予想数字に対して、2%pts.から4%pts.の上方修正でした。新たに始まった2026年度見通しはQuickコンセンサスでは2025年度比13%の経常増益予想です。計算上は、原油価格が2025年度比で年度平均50%上昇しても増益は維持できることになります。
予測の難しい企業収益の見通しを置いて、最近の株価動向をみると昨年秋以降で大きな変化が見られます。昨年前半まではAIを中心とする大型株が市場を主導していましたが、秋以降は中小型株が優勢な状況となっています。図表1には、中小型株で構成されるTOPIXスモールを分子に大型株で構成されるTOPIX100を分母にした相対株価指数を示しました。直近ではやや大型株優位に振れていますが、今年の2月以降は、顕著なTOPIXスモールの優位性が見られました。AI関連から離れて、新たな銘柄、割安銘柄を探す動きが背景にあるようです。
この市場動向に合わせるように、2月には、日本証券取引所グループが、「JPXスタートアップ急成長100指数」を発表しました。これは、東証グロース市場に上場する銘柄から、日本を代表する高成長スタートアップ100社を選定した指数です。具体的には、売上高が前年度比20%以上で成長、かつ時価総額が1年または半年前比で倍増している銘柄から、時価総額上位100社を選んだとあります。指数は時価総額基準となっています。
この100社に等金額投資した場合にどうなったかを試算してみました。新規公開銘柄も多く入っているので、計測期間は3年間です。この100社全社への等金額投資のパフォーマンスはTOPIX、日経平均、TOPIXスモール指数を上回ることができませんでした。
100社を個別にみると前年度比で大幅な減益企業も含まれているので、100社から過去3年と今期予想の営業増益率が前年度比で20%以上上回っている企業33社のパフォーマンスを計測しました(図表2の破線)。昨年秋まではTOPIX、日経平均などの指標を大きく上回るパフォーマンスを示しましたが、AI銘柄からの投資資金の離散の影響を受けて右下がりの状況になっています。そこでさらに、先ほどの33社からAI、SaaS関連銘柄を除いた24社のパフォーマンスをみてみました(図表2の太い実線)。足元はイラン攻撃の影響で大きく調整していますが、TOPIXは若干下回ったもののTOPIXスモールを上回るパフォーマンスを上げています。
いろいろと試算してみましたが、中小型株ではマーケットのテーマを追わずに、売上高に伴って利益も成長している企業を丁寧に探し、投資することがよいパフォーマンスにつながるということのようです。この冊子が届くころには、イランとの紛争も終結に向かい、原油価格も落ち着きを取り戻すことを期待していますが、丁寧に企業の成長を追うことが、花咲く投資につながると考えます。
(3月30日記 山中 信久)
(図表1)TOPIXスモールとTOPIX100の相対株価指数推移

(出所)ASTRA Managerからいちよし経済研究所作成(直近株価は3月30日現在)
(図表2)JPXスタートアップ急成長100社のパフォーマンス

(出所)日本証券取引所グループ「JPXスタートアップ急成長100指数構成銘柄一覧」から
Astra Managerのデータを基にいちよし経済研究所作成(直近株価は3月30日現在)
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