成長産業・企業の展望MARKET OVERVIEW

2017年11月号巻頭言
16連騰を考える

更新日 2017年12月25日

10月は天候の良い月にもかかわらず、東京では11日から15日間連続して降水を記録しました。さらに、23日には台風21号が上陸、翌週末には台風22号が日本列島をかすめました。台風21号の上陸は、気象庁が発表している1951年以降の統計によると、日本列島に上陸した台風で3番目に遅い時期の記録になります。
一方、株式市場では日経平均株価(以下日経平均)が、1949年の東京証券取引所(以下東証)再開後初めての16連騰(10月2日から24日)を記録しました(注1)。連騰後の27日には、1996年6月以来、21年ぶりに22,000円台を回復しています。図表に示したように、過去の最長連騰記録は1960年12月21日から翌1961年1月11日までの14日間です。
新聞紙上でも今回の連騰記録がいろいろと取り上げられています。図表には東証再開後に10連騰以上を記録した時の開始年月日と終了年月日、その間の日経平均の上昇率などを示しました。10連騰以上は今回を含めて22回、その間の日経平均上昇率は平均8%、1日当たりの上昇率平均は0.7%でした。今回の16連騰は7.1%の上昇、1日当たり平均上昇率は0.4%なので、長かった割には高揚感がないという意見もうなずけます。
(注1)東証第一部に上場している全銘柄で構成される東証株価指数(TOPIX)では、1988年2月から3月にかけて16連騰があり、株価指数はこの間に9.7%の上昇を示しています。

さて、前回の14連騰と今回の16連騰を比較するといくつかの共通点があります。
第一は、いずれも東京オリンピックの3年前という点です。これは、元同僚だった「会社四季報」の達人から教わりました。オリンピックまでは景気が腰折れすることはなく、企業業績は拡大が続くという判断が株価に反映されていると考えられます。
第二に、景気に関してはいずれも拡大期にあたります。前回は1958年6月から始まる岩戸景気(第4循環)の真っ只中でした。景気循環の山は1961年12月ですので、連騰記録はその1年前になります。今回は2012年11月を谷とする景気拡大期(第16循環)にあります。 内閣府・景気動向指数研究会の判断では、まだ景気は拡張期にあり、今年9月で58カ月目、いざなぎ景気の時に記録した57カ月を抜き戦後2番目の長さになったとみられています。
第三に、景気拡大を受けて企業業績が好調なのも連騰記録の共通点です。1960年度の企業業績を日本銀行「主要企業経営分析」の全産業(除く金融)でみると、前年度比26%増収、29%経常増益でした。翌1961年度も22%増収、11%経常増益となっています。今回の2017年度の業績予想(注2)は、第1四半期決算の発表が終了した8月末段階で、会社計画は前年度比4%増収、6%経常増益、アナリスト・コンセンサスで5%増収、13%経常増益でしたが、第2四半期決算を迎えて上方修正が相次いでおり、会社計画、アナリスト・コンセンサスともに上方修正されると考えられます。
(注2)東証一部上場の主要企業で構成されるTOPIX500(除く金融)ベース
政治面をみると、1960年の前半は日米安全保障条約の調印を巡って国会が大荒れとなり、6月には安保条約反対派が警官隊と衝突し死亡者が出ました。7月には岸信介首相が退陣、池田 勇人内閣が誕生、11月には総選挙が行われ、自由民主党が圧勝をしました。1970年度までの10年間に国民所得を倍増させるという所得倍増計画は、14連騰記録の只中の1960年12月27日に閣議決定されています。今回も10月に総選挙が行われ、安倍晋三首相の自由民主党が圧勝をしました。森友、加計学園問題などで国会は荒れましたが、1960年当時とはずいぶん次元が異なるような気がします。

問題は連騰の後の市場がどのように推移したかです。10連騰以上の記録でみると、連騰最終日に対して90日後には平均5%、180日後には13%の上昇となっています。上昇した回数は90日後で14回、180日後で15回です。90日後、180日後ともに5%以上下落していたのは1953年1月の12連騰後、1961年6月の10連騰後、2015年5月の12連騰後の3回のみです。1960年の14連騰後は、90日後で17%、180日後で23%の上昇でした。
足元の景気は引き続き拡大傾向にあると考えられます。日本経済研究センターが発表するエコノミスト42人によるESPフォーキャスト調査(10月)でも、2017年度の実質経済成長率は1.59%、2018年度は1.16%と、民需をけん引役として堅調な予測となっています。企業業績に影響を与える為替も、米連邦公開市場委員会(FOMC)の追加利上げが12月にも予想され、欧州中央銀行(ECB)も10月の理事会で、債券買取額の縮小を決定しました。一方、日銀は引き続き金融緩和を継続すると考えられ、大幅な円高になる可能性は低いと思われます。
最大のリスクは北朝鮮という地政学リスクですが、これは部外者には全くわかりません。また、景気拡大も9月まで58カ月続き、企業業績も今2017年度で6期連続増益が予想されるなど、両者ともにそろそろピークアウトの懸念もあります。しかし、今回の景気拡大は2014~2015年にかけて踊り場があったこと、企業業績も2016年度は増益率が大きく落ち込んだことから、それらを考慮するとまだそれほどの成熟感はないともいえます。慎重にかつ大胆な投資判断の時期にあると考えます。

(10月31日 山中 信久)

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