成長産業・企業の展望MARKET OVERVIEW

2018年7月号巻頭言
こんな時には連続ピーク利益更新企業

更新日 2018年07月10日

FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップ ロシアのグループリーグが終了しベスト16が決まりました。この冊子がお手元に届くころには決勝戦に臨む2カ国が決まっています。序盤こそ、アルゼンチン(FIFAランキング5位)が初出場のアイスランド(同22位)に0-0で引き分け、前回大会優勝のドイツ(同1位)がメキシコ(同15位)に0-1で敗れるなど波乱含みでした。出場国中のFIFAランキングで下から3番目の日本(同61位)がコロンビア(同16位)に勝ったのも海外メディアを驚かせました。ワールドカップでアジアのチームが南米チームに勝ったことがなかったというのですから。
しかし、決勝トーナメントの顔触れをみると、FIFAランキング上位のチームが順当に勝ち進んでいます。大波乱はドイツがグループリーグで最下位となり敗退したことぐらいでしょうか。A~Hまでの8グループで、FIFAランキング下位の国が10位以上も上位の国を下し、下剋上で決勝トーナメントに勝ち進んだのは16ヵ国中3カ国のみでした。わが日本もこの3カ国の内の一つです。
 
さて、ワールドカップにエネルギーを吸い取られた訳ではありませんが、株式市場は梅雨空のような状態です。東京証券取引所1部上場銘柄の今年1~6月の売買高は1日当たり15億株強に減少し、2004年以来の低水準に留まりました。
日経平均株価は3月23日の20,617円(終値)を底に5月21日には23,002円まで回復しましたが、その後は22,000~23,000円のボックス相場で推移しています。アメリカ・トランプ政権が次々に発表する輸入関税引き上げと、それに対応する中国、EU(欧州連合)の輸入関税引上げが激しさを増し世界経済への影響が懸念されること、アメリカの利上げが想定以上になるのではないかということなどが影響していると考えられます。また、4~5月に発表された日本企業の今2018年度の企業業績計画も、前年度比で1%強の経常増益と非常に保守的なものでした。アナリスト・コンセンサス予想では前年度比8%経常増益予想ですが、3月からは下方修正となっています(注1)。
 
2018年度の会社業績計画は慎重ですが、個別企業ベースでみると順調に業績を拡大している企業が数多くあります。
11年間(2007年度から2017年度)の財務データが取得可能な3,051社(除く金融)の内で、前2017年度に過去10年間のピーク経常利益を更新した企業は1,000社弱、32%に達します。その内、2018年度も経常増益を計画している企業は670社です。経常増益率10%以上の企業に限定しても200社強あります(注2)。
2017年度は過去10年のピーク経常利益を更新できなかったが、2018年度に更新を計画している企業も200社弱あります。この内、2017年度が経常増益、経常利益黒字化で2018年度に10%以上の経常増益を計画している企業は70社強です。慎重な業績計画を発表している自動車(輸送用機器)が全体の業績計画を押し下げていますが、企業業績は堅調を持続しており、連続して業績拡大を続ける企業も多くあります。
2008年度以降、10年間連続して経常増益を続けている企業も23社ありました。この内、7社は2018年度も前期比10%以上の経常増益を計画しています。
ちなみにこの7社の顔触れを見ると、衣料品のネット通販「ZOZO TOWN」を運営するスタートトゥデイ、食べ放題の「焼肉きんぐ」を展開する物語コーポレーション、「カラオケ本舗まねきねこ」を展開するコシダカホールディングスなど、創業者やオーナー一族が筆頭株主となり、経営に携わっている企業が5社。とんかつ専門店「かつや」などを展開するアークランドサービスホールディングス(アークランドサカモトが52.9%所有)、EC(電子商取引)業者に決済処理サービスを提供するGMOペイメントゲートウェイ(GMOインターネットが51.6%所有)など、上場企業の子会社2社です。7社の経営を分析したわけではありませんが、経営の意思決定の速さが増益につながっているように感じます。
 
図表には、前2017年度に直近10年間のピーク経常利益を更新した企業と、ピーク経常利益を更新できなかった企業の株価推移を示しました。2008年3月末を基準として、ピーク経常利益更新企業は単純平均で4.7倍となったのに対して、未更新企業は平均で2.0倍に留まっています。加重平均でみても、ピーク経常利益更新企業は2.3倍に対して、未更新企業は1.3倍にすぎません。
ワールドカップでも下剋上は僅かで、実績のある国が決勝トーナメントに勝ち上がりました。関東甲信越地方は観測史上最速で梅雨開けしたものの、株式市場は梅雨空の状態が続いています。こういう時には、連続増益、ピーク利益更新という実績があり、2018年度も着実な業績拡大を計画する企業へ投資する視点も必要とかと考えます。

(注1)会社計画、アナリスト・コンセンサスともにTOPIX500採用企業から金融、決算期変更などを除いた412社の集計
(注2)2018年度の業績計画を公表しない企業については日経会社情報の経常利益で代替

 

(2018年6月29日記 山中 信久)


(注1)母集団は全上場企業3,736社から金融を除き、2007年度から継続して財務、株価データを取得できる3,051社。利益は経常利益。ピーク利益更新企業は989社、未更新企業は2,062社
(出所)Astra Managerのデータをもとにいちよし経済研究所

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