成長産業・企業の展望MARKET OVERVIEW

2019年新春号巻頭言
新しい元号を迎えIPOに期待したい

更新日 2019年01月10日

 新年明けましておめでとうございます。
 今年の干支は「亥(いのしし)」です。十二支では最後の干支で、「亥」には「とざす」の意味があり、草木の生命力が種の中に閉じ込められた状態を表しているとのことです。

 今年2019年の経済を考えるとき、まず最大の懸念要因として、アメリカと中国の貿易摩擦の影響が挙がります。中国がどれだけアメリカの要求を受け入れるかが鍵となるのでしょう。ただし、アメリカと中国との摩擦は、貿易問題と覇権争いを分けて考える必要があります。覇権争いは双方とも妥協することが難しく長期に亘ると考えられますが、貿易摩擦に関しては、両国とも経済へのマイナスの影響を考慮して、どこかで妥協するという見方が多いようです。

 日本に目を転じると、今年は多くのイベントがあり一定の経済効果をもたらすと思われます。
 2月1日は日本とEUのEPA(経済連携協定)が発効します。関税引き下げは長期に亘ることから、すぐに効果が出てくると思えませんが、輸出産業にプラスに働きます。
 5月1日には新しい天皇の即位があり、元号も改まります。10月の「即位礼正殿の儀」、11月の「大嘗祭」へと続く一連の儀式と祝賀ムードは景気にプラスに働くと考えます。
 9月20日にはラグビー・ワールドカップ2019日本大会が開催されます。11月2日の決勝戦まで、12会場(都市)で行われ、訪日客の増加が予想されます。
 10月1日には消費税が8%から10%へ引き上げられます。こちらは経済にマイナスの影響となりますが、様々な対策が出されており、大きな消費の落ち込みを想定する必要はないと考えています。
 一方、金融に関しては、アメリカは利上げに入っており、EUは資産購入プログラムを2018年12月末で終了しました。新興国でも資金流出、通貨安の対応策として金利を引き上げる国が目立ちます。日本は引き続き金融緩和政策が続けられていますが、国債の購入は80兆円を下回る状態が続いており、大幅な金融緩和の副作用が言われるようになりました。2008年の金融危機以降、世界で続いた大規模な金融緩和から正常化への道に向かい始めたと考えます。

 さて、2018年の新規上場企業は、直前の延期があったものの90社となり、2017年に続き90社を超えました。今年も昨年並みの90社前後の新規上場が予想されています。新しい元号の年を迎えるにあたって、平成30年間の新規公開企業について振り返ってみました。
 平成元年(1989年1月8日)から平成30年(2018年)の間に新規上場した企業は2,444社に達します。日本航空(9201、東証1部、上場2012年)のように事業再生を経て再上場した企業や、第一三共(4568、東証1部、同2005年)、セブン&アイ・ホールディングス(3382、東証1部、同2005年)などのように、合併に伴う再上場もあります。JR東日本(東日本旅客鉄道(9020、東証1部)、同1993年)、JR西日本(西日本旅客鉄道(9021、東証1部)、同1996年)、JR東海(東海旅客鉄道(9022、東証1部)、同1997年)が相次いで上場、JT(日本たばこ産業(2914、東証1部)、同1994年)や日本郵政(6178、東証1部、同2015年)と同グループ2社など、民営化による上場が相次いだ30年でもありました。

 IT関連、新しいビジネスモデルで高成長を遂げた企業も多数上場しています。ネット情報検索サイトのヤフー(4689、東証1部、同1997年)、ネット広告専業代理店のサイバーエージェント(4751、東証1部、同2000年)、スマホ向けソーシャルゲーム・プラットフォームを展開するディー・エヌ・エー(2432、東証1部、同2005年)、インターネット・ショッピングモールの楽天(4755、東証1部、同2000年)など、IT関連が相次いで上場しました。
 また、上場以降の連続増益を続ける家具・インテリア製造小売りのニトリホールディングス(9843、東証1部、1989年以下ニトリ)、ユニクロを展開するファーストリテイリング(9983、東証1部、同1994年)、総合ディスカウント店を展開するドンキホーテホールディングス(7532、東証1部、1996年)も平成上場です。

 これらの平成に上場を果たした企業から、売上高が大きく伸びた企業をランキングしたものが下表です。一定の規模に達した企業ということで、売上高1,000億円以上を掲載しています。
 最も大きくなったのはヤフーで売上高は700倍、続いてキョーリン製薬ホールディングス(4569、東証1部、同2006年、以下キョーリン)が300倍、楽天が290倍となっています。高成長を反映して、株価も大幅に上昇しています。上場日の終値に対する直近株価(12月20日)をみると、ヤフーは110倍、ファーストリテイリングは56倍、ニトリが58倍と上位10位に入っています。キョーリンのように合併により売上高が大きくなった企業があることもあり、売上高の伸びと株価の上昇率がちぐはぐな感じを受けますが、両者の相関を示す相関係数は高い値を示しています。利益の伸びよりもはるかに関係が高いことが分かりました。

 2019年は「亥」年、冒頭に書いたように「生命力が種に閉じ込められた状態」です。いつにも増して、生命力すなわち成長力のある企業(種)を見つけ投資パフォーマンスの向上に努力したいと思います。

(2018年12月21日記 山中 信久)

(図表)上場からの売上高拡大率上位20社

(注1) 母集団は1989年(平成元年)から2018年(同30年)までの間に上場した企業2,444社から、直近決算期で売上高1,000億円以上の企業。
(注2) 上場時の売上高は上場日の入った決算期。株価は上場日の終値。分割、増資などの修正後。
(出所)  Astra Managerのデータをもとにいちよし経済研究所
 

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