成長産業・企業の展望MARKET OVERVIEW

2020年新春号巻頭言
SDGsとニッチトップ

更新日 2020年01月10日

 新年あけましておめでとうございます。
 今年2020年の干支は子(ね)、動物に当てはめると鼠(ネズミ)になります。子は繁殖する、生むという字からきており、種子の中に新しい生命が萌し始める状態を示しているとのことです。新しい物事や運気のサイクルが始まる年と考えられています。

 ここ数年、ESGやSDGsの文字を毎日のように新聞紙上で目にします。ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、コーポレートガバナンス(Corporate Governance)の頭文字を取ったもので、この取り組みを考慮した責任投資原則を多くの機関投資家が採用するようになりました。責任投資原則自体は、当時の国連アナン事務総長の指導のもとに、欧米の大手機関投資家の参加を得て策定され、2006年に公表されました。ESGは、2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連責任投資原則に署名、ESG指数を選定し、その指数に連動した運用を開始したことで一気に関心が高まりました。2018年の世界でのESG投資残高は30兆ドル強に達しているとみられています。
 SDGsは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の頭文字を取ったもので、17の目標(Goal)があるので「s」が付いています。17の目標は2015年の国連総会で採択された、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」で定められました。目標1の「貧困:あらゆる場所のあらゆる貧困を終わらせる」からはじまり、目標17は「実施手段:持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」となっています。
 その中には、「保健:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する(目標3)」、「エネルギー:すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する(目標7)」、「インフラ、産業化、イノベーション:強靭なインフラ構築、包括的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る(目標9)」、「気候変動:気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる(目標13)」など、いま世界で求められている重要項目が列挙されています。このSDGsの17の目標の下には具体的な細目として169のターゲットが作られています。
 なお、ESGは企業活動の原則を示し、SDGsはそのための持続的な目標と捉えることができます。

 我々いちよし経済研究所がフォローする中堅企業にとっても、ESG、SDGsは重要な指針となります。しかし、中堅企業への投資の観点からは、成長性とその原点となる競争力という視点も忘れてはなりません。
 そこで、いちよし経済研究所が継続的に業績予想を行う企業の中からSDGsに積極的に取り組んでいると考えられる企業70社強を選び、一方で、比較的限られたそれぞれの市場で競争力を有し、その市場でトップの位置のある企業、いわゆるニッチトップ企業140社強を重ね合わせてみました。両者を満たす企業は20社強あります。
 なお、このニッチトップには、グローバルに活躍し、世界市場シェアで30%以上の製品を有している企業に加えて、国内でトップシェアの商品やビジネスを有する企業、IT関連でデファクトとなっているシステム、ソフトを開発した企業も含めています。
 この両者を満たす企業の株価推移を示したのが下の図表です。2016年12月末を基準(100)として、SDGsが大きく注目され始めた2017年以降の各企業の株価パフォーマンスを単純平均したものです。直近(2019年12月23日)では183となっており、東証株価指数(TOPIX)、JPX日経中小型株指数を大きく上回っています。SDGs関連の株価パフォーマンスも良好ですが、ニッチトップの視点を加えた企業群のパフォーマンスのほうが総じて高いようです。2018年2月の最高値を超えていないこと、変動が大きいことが気になりますが、対象企業数が絞り込まれた結果、一部の企業の株価変動の影響が大きくなっているためとみられます。

 2020年の株式市場を考えると、(1)一部の合意には達したものの基本問題が解決していない米中間の貿易問題、(2)中国経済の減速、(3)ドイツ経済の低迷など、リスク要因が数多くあります。一方で、(a)景気動向を示す世界製造業PMIが2019年11月まで4ヶ月連続で改善、(b)半導体需要および半導体製造装置の受注が増加に転じると予想されていること、(c)事業規模26兆円、財政支出13.5兆円の大型補正予算の効果などが期待され、企業業績は2020年度は増益に転じると予想されます。
 子(ね)は新しい生命が種子の中に萌し始める状態を表していると考えられています。いちよし経済研究所では、前述したような視点も取り入れながら今年も新しい成長の萌しを示す企業を探し、皆様にお届けできるように努めていきたいと考えています。
(2019年12月25日記 山中 信久)

(図表)SDGs+ニッチトップ企業の株価パフォーマンス

(注1) 各指数ともに2016年12月末=100。2019年12月は23日現在。
(注2)SDGs+ニッチトップはSDGs関連とニッチトップの両者を満たす企業の株価指数の単純平均。
(出所)Astra Managerのデータをもとにいちよし経済研究所

ご留意いただきたい事項

  • この資料は情報提供を目的として作成されたものです。投資勧誘を目的としたものではありません。そのため証券取引所や証券金融会社が発表する信用取引に関する規制措置等については記載しておりません。
  • この資料は信頼しうるデータ等に基づいて作成されたものですが、その正確性・完全性を保証するものではありません。また、将来の株価等を示唆・保証するものでもありません。
  • 記載された内容・見解等はすべて作成時点でのものであり、予告なく変更されることがあります。
  • 有価証券の価格は売買の需給関係のみならず、政治・経済環境や為替水準の変化、発行者の信用状況の変化、大規模災害の発生による市場の混乱等により、変動します。そのため有価証券投資によって損失を被ることがあります。商品や銘柄の選択および投資の時期等の決定は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。
HOME
PAGE TOP